
https://www.sleepyhead.club/tempalay_doushiyo
眠れない夜、ありますよね。 「あ、これもうどのくらい経った? そろそろ寝れる? ……いや、まだ寝れないのか」と、暗闇のなかでただ時計の針を意識してしまうあの時間。 特に夏の夜は、じっとりとした寝苦しさのせいで余計に脳が冴えてしまうこともあります。今年の夏は涼しいなんて噂もありますが、それでもやっぱり、ふと眠れない夜が訪れる日はあるものです。
それならいっそのこと、無理に寝ようとするのはやめて、夏の夜を豊かに過ごしてしまいましょう。 今回は、日常に音楽が欠かせない私が、眠れない夏の真夜中にベッドの上やベランダで聴きたくなる5曲を厳選しました。心地よい音の波に、身を委ねてみてください。
① Tempalay「どうしよう」
まず1曲目は、日本の3人組サイケデリック・ポップバンド、Tempalayが2018年にリリースしたミニアルバム『from JAPAN 2』に収録されている「どうしよう」です。
中毒性のある浮遊感に満ちたサウンドと脱力感のあるボーカルが特徴で、彼らの代表曲のひとつ。ちなみに私がこの曲を知ったきっかけは、BTSのRMがおすすめとして聴いていたことでした。
この曲を再生した瞬間、部屋の空気がガラリと変わり、ふわふわと浮遊するような夜が始まります。 イメージするなら、誰もいない夜のプール。青く静かに光る水面が波打つ様子を横目に、ビーチチェアに寝そべってただただ夏の夜の空気を感じている……そんなとびきりチルな雰囲気に浸れるのです。 まあ、現実はホテルのプールではなく自分の部屋なのですが、、、
ベランダに出て夜風を感じながら聴くだけで、なんだか最高に良い感じになれます。カフェイン抜きの、ちょっと凝ったお気に入りの飲み物を片手に楽しみたい一曲です。
② RADWIMPS「螢」
2曲目は、RADWIMPSが2006年にリリースしたシングル『有心論』のカップリングであり、名盤『RADWIMPS 4〜おかずのごはん〜』にも収録されている「螢(ほたる)」です。
アコースティックギターの繊細なアルペジオと、野田洋次郎さんのどこか切なくも温かい歌声が静かに響く、初期の隠れた名バラードです。
この曲には私の中に大切な記憶があります。知ったきっかけは、高校生の頃に出会った、控えめだけど不思議な魅力がある軽音部の友達でした。流行りではなく、心からバンド音楽を愛しているような子だったのですが、彼女が文化祭のステージで、アコースティックギターを抱えてこの曲を弾き語りしていたんです。 緊張でほんの少しだけ声が震えていたけれど、それが逆に切なさを引き立てていて、本当に綺麗で素敵なメロディーだなと強く印象に残りました。今でもこの曲を聴くと、あの夏の体育館の匂いや彼女の歌声を思い出します。
名前の通り、夏の夜空に儚く明滅する蛍の光をサウンドに写したような美しい曲。目を閉じれば、心の中に満天の星空と優しい光が広がっていきます。
③ Agust D「Moonlight」
3曲目は、BTSの実力派ラッパーでありプロデューサーでもあるSUGAが、ソロ名義「Agust D」として2020年に発表した2ndミックステープ『D-2』のオープニングを飾る「Moonlight」です。
クラシックなヒップホップの要素を取り入れたノスタルジックなビートの上で、彼がこれまでに歩んできた道のりと、現在の葛藤を正直にスピットするエモーショナルな楽曲です。
ラップならではのラフさと、程よく縦にノれる洗練されたトラックが、夏の夜を一気に愉しくしてくれます。特にイントロの即興(アジトでそのまま録音したかのようなリアルな空気感)の箇所が、私の一番のお気に入り。 間接照明やキャンドルの小さな光だけを灯し、窓を開けて夜風を部屋に入れ込む。そこでお気楽にサワーや冷たい飲み物を片手に、首を上下に揺らしながら音に身を委ねる。部屋というプライベートな空間だからこそ、最高に軽やかな夏を堪能できる気がします。歌詞が本当にエッセイのように深く胸に刺さるので、ぜひ和訳を読み込んで、言葉を噛み締めながら聴いてみてください。
④ 宇多田ヒカル「Automatic」
4曲目は、もはや説明不要。我らが宇多田ヒカルさんが1998年にリリースした、衝撃のデビューシングル「Automatic」です。
当時わずか15歳だった彼女が世に送り出したこの圧倒的なR&Bサウンドは、20年以上経った今聴いても全く色褪せず、むしろ夏の夜、特に「ネオンが輝く都会の街」と相性が良すぎることを最近になって発見しました。
ベストシチュエーションは、新宿のようなきらびやかな繁華街をバイクや車で駆け抜ける瞬間。 そこまでいかなくとも、夜景が見える高速道路を走る夜行バスの中でこれを聴くと、自分の中のムードが恐ろしいほど高まります。ただ音楽を聴いているだけなのに、まるで自分が特別な映画の主人公になったかのような、そんな不思議な力を味方につけられる大名曲です。
⑤ Nujabes「aruarian dance」
最後に紹介するのは、日本のローファイ・ヒップホップの先駆者であり、世界中に今なお影響を与え続ける音楽プロデューサー・Nujabes(ヌジャベス)が手がけた名曲「aruarian dance」です。アニメ『サムライチャンプルー』のサウンドトラック(2004年)に収録され、彼のキャリアの中でも特に愛されているトラックです。
なぜだかよく分からないのですが、私の中で「Nujabesといえば夏、夏といえばNujabes」という強固な方程式があります。 どちらかというと、彼の音楽は日差しが強い夏の朝に聴くことが多く、うだるような暑さを涼しく中和してくれる出番が多いのですが、この曲は数少ない「夏の夜」に美しく溶け込む曲。
何より、この曲には「歌詞(言葉)」がありません。 日々の生活に疲れすぎてしまっている時、言葉がある曲を聴くと、どうしても脳がメッセージを受け取ろうとして耳障りに感じてしまう瞬間が私にはあります。そんな時、この極上のループビートと美しいギターの旋律だけが流れるインスト曲は、荒んだ心をそっと撫でてくれる。眠れない夜の、一番優しい睡眠導入の入り口に立たせてくれるような安心感があります。
おわりに
こうして音楽に没頭していると、眠れないはずの退屈な夜が、なんだか自分だけの秘密の隠れ家のように思えてきませんか?
夜の静寂と、夏特有の少し湿った空気、そしてお気に入りのメロディー。これらが混ざり合う時間は、案外、昼間のどんな時間よりも贅沢な心の保養なのかもしれません。
とはいえ、睡眠は人間にとって何よりも大切な「健康」の基盤です。お互いに夜更かしはほどほどにして、心地よく音楽に流されながら、タイミングを見てちゃんと布団に入って眠るようにしましょうね笑。 それでは、みなさま、良い夢を。
