
私と「ミニシアター」との出会いは、つい3〜4年ほど前のことだったと思います。
私の地元はかなりの地方で、映画館は県内にたったの4個だけ。今考えれば、映画を観ること自体がまったく気軽ではない地域に住んでいました。そして、そんな場所で生き残れる映画館といえば、TOHOシネマズをはじめとする、資本がしっかりある大企業がバックについた、いわゆる「普通のシネコン(複合映画館)」しかありませんでした。映画館とは、そういう巨大でピカピカした場所なのだと、ずっと思い込んでいたのです。
だからこそ、都内へ出てきたばかりの頃、ふらっと歩いた道沿いに「ミニシアター」を発見した時は本当に驚きました。この世には、大手のシネコン以外の映画館が存在するのかと。キーワードは、レトロで情緒深い空間。それが今もなお現代にしっかりと残っているという事実に、ものすごく感動したのを覚えています。
その存在を知ってからしばらくして、ずっと観てみたかったウォン・カーウァイ監督の映画『ブエノスアイレス』が、4Kリマスター版としてミニシアターで再上映されることを知りました。それをきっかけに、私は初めてミニシアターの重い扉を開け、館内へと足を運んだのです。
あれからしばらく経ち、最近はなかなか足を運べていなかったのですが、「さあ、今こそミニシアターの素晴らしさを語る時!」という布教の気持ちも込めて、私が今どうしても行きたいと思っている魅力的な3つのミニシアターをピックアップしてみました。
① 東京・渋谷|ユーロスペース

- 場所: 東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 3F(渋谷駅から徒歩約8分)
- 劇場の特徴: 1982年に開館した、東京のミニシアター文化を牽引し続ける老舗中の老舗。インディーズ映画や作家性の強い名作を世界中から集めて上映する、映画ファンの聖地です。
渋谷の少しディープなエリアにあるユーロスペースですが、いま最も私の「行きたい欲」が高まっている劇場です。というのも、今年の8月9日と8月15日に、戦争関連作品の特別上映が行われるという情報をキャッチしたからです。
上映ラインナップは『黒川の女たち』『東京裁判』『野火』の3作品。なかでも巨匠・市川崑監督の『東京裁判』も非常に気になりますが、塚本晋也監督の『野火』は、実は1年以上前から「どこかのスクリーンで観られないだろうか……」とずっとチャンスを伺っていた作品でした。念願のスクリーンで、あのはち切れんばかりの圧倒的な映像美と狂気を浴びるため、今年の夏はユーロスペースへ足を運ぼうと強く意気込んでいます。
② 埼玉・深谷|深谷シネマ

- 場所: 埼玉県深谷市深谷町9-12(JR高崎線「深谷駅」から徒歩約10分)
- 劇場の特徴: 2002年に誕生した、なんと「酒蔵(旧七ツ梅酒造)」の跡地を改装して作られたという、全国的にも極めてユニークなミニシアター。
こちらの存在を知ったのは、真空ジェシカの川北さんが天竺鼠 川原さんとやっている番組『ニュースクライシス』がきっかけでした(私は真空ジェシカの熱心なファンなのです)。
写真で見るだけでも、歴史を重ねたお酒の蔵ならではのレトロな外観と内装が素晴らしく、どこかタイムスリップしたかのような居心地の良さが画面越しに伝わってきます。周辺の街並みも含めて、空間づくりが本当に素敵なんです。 埼玉の深谷という場所は、何か目的がないとなかなか足を運ばない地域ではありますが、「深谷シネマに映画を観に行く」という贅沢な目的だけのために、タイミングを合わせてふらりと小旅行がてら伺いたいなと企んでいます。
③ 京都・出町柳|出町座(でまちざ)

- 場所: 京都府京都市上京区三芳町133(京阪・叡山電鉄「出町柳駅」から徒歩約5分)
- 劇場の特徴: 2017年にオープンした、映画の上映だけでなく、こだわりの書籍販売スペース、そしてお洒落なカフェがシームレスに融合した、京都の新しいカルチャー拠点。
最後に紹介するのは、関西に遠征してでも行きたいこちらのシアター。 映画のスクリーンだけでなく、本屋さんとカフェが一緒になっているなんて、文化系人間の心を全方位から惹きつけるあまりにも魅力的な空間です。

個人的なイメージなのですが、ミニシアターのフードって、なぜか「塩とキャラメルの2種類しかないポップコーン」と「なぜか置いてあるドーナツ」くらいしかないイメージがありませんか?(偏見ですが、共感してくれる人も多いはず。笑)。 それは上げて落とすわけではなく、むしろ愛おしいポイントなのですが、出町座のようにガッツリと本格的なカフェが併設されているのはありがたすぎます。「せっかく良い映画を観るぞ」というおめかしした気概で来ているので、上映前後に美味しいコーヒーを飲みながら本を開ける環境があるのは、たいへん喜ばしいことです。脳と心が、一瞬で豊かになります。おもちゃ箱のような可愛らしい外観も、行く前から心が躍ります。
おわりに
大型シネコンの大迫力な3D映像や爆音システムも楽しいですが、ミニシアターの魅力は、何といっても「映画を観るという体験そのものが、劇場の空間ごと記憶に残る」という点にある気がします。
あの少し狭くて、レトロな椅子の匂いがして、暗闇の中にひっそりとスクリーンの光が浮かび上がる感じ。そこでしか出会えない、静かだけど強烈な光を放つ作品たち。
最近ちょっと映画を画面のサイズだけで選んでいたな、という方がいれば、ぜひ今週末は近くのミニシアターを検索してみてください。シネコンのポップコーンの匂いとは一味違う、ちょっぴりビターで、深いカルチャーの香りがあなたを待っているはずです。

