
前回の「中毒ドラマ【前編】」に引き続き、今回は「もしもテープだったら擦り切れて再生不能になるまで見返しちまっているよ、こりゃまいったなドラマ」の後半戦、残りのおすすめ3作品をご紹介します!
前編で熱弁したお仕事コラムや社会派ラブコメとはまた一味違う、脳が痺れるほどの骨太サスペンスから、芸術の域に達した実写化、そして愛おしすぎる会話劇まで。ドラマにしか出せないあの「濃密な1時間」の魅力がぎゅっと詰まった、私の人生のバイブルたちです。
今回も出演者や制作陣の正確なデータをばっちり補完しつつ、後半戦の幕を開けたいと思います。それでは、私のドラマ愛爆発リスト、後半戦スタートです!
④ 『エルピス—希望、あるいは災い—』

- 放送時期: 2022年10月〜12月(カンテレ・フジテレビ系)
- 出演者: 長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、岡部たかし、鈴木亮平
- プロデューサー: 佐野亜裕美
- 脚本: 渡辺あや(完全オリジナル脚本)
- 演出: 大根仁 ほか
- あらすじ:
スキャンダルによってエースの座から転落したアナウンサー・浅川恵那と、バラエティ番組の若手ディレクター・岸本拓朗が、ある連続殺人事件の冤罪疑惑を追う中で、メディアの闇や国家権力という巨大な壁に直面していく社会派サスペンス。
これはもう、テレビドラマ史に残る渾身の一作。令和の名作中の名作ではないかと思います。紛れもなく重厚な骨太作品なのに、随所にほどよいコミカルさが丁寧に仕込まれていて、その絶妙な緩急の付け方と展開の進み方にどんどん引き込まれてしまいます。プロデューサーの佐野さんと脚本の渡辺あやさんが、構想から実に6年もの歳月をかけ、複数の局を渡り歩いてようやく実現に漕ぎ着けたという執念の背景を知り、深く納得しました。
実はいうと、今では何回も見返しておりますが、リアルタイムで観ていた時は、本当にこの先どうなってしまうのか、毎話ドキドキハラハラで心臓に悪いお話でした…。絶対に単純なハッピーエンドにはならない重さがあるので、しんどい展開が苦手な人は結構きついかもしれません。ですが、この作品を観るということは「今私たちが生きている社会と向き合う」ということでもある気がして、できれば多くの人に観てほしいと願う作品です。
そして何より、役者陣の配役が完璧すぎる。長澤まさみさんの苦悩と覚醒の美しさは当然のことながら、鈴木亮平さんの大人の色気と恐ろしさ、岡部たかしさんがメディアで思い切り才能を開花させたあの圧倒的な存在感、三浦透子さんの吸い込まれそうな演技力。なかでも一番度肝を抜かれたのは、眞栄田郷敦さんの演技です。私はこの作品で彼の大ファンになりました。これまでのイケメン俳優のイメージが一変しましたし、彼の役者人生において最もハマり役だったのではないかと思っています。
※ここから若干のネタバレになるかもしれないので、絶対阻止したい方は飛ばしてください!
私はこの作品を観ると、暗闇の中に一筋の光が差し込むような、本物の勇気と希望をもらえます。自分の無力感に負けてはいけないこと、不条理への抵抗を諦めてはいけないこと、自分や誰かを強く信じ続けること。社会の中で生きる人間として、打ちひしがれてもなお立ち上がろうとする彼らの姿に、何度も心を奮い立たせられます。
⑤ 『岸辺露伴は動かない』

- 放送時期: 2020年〜2022年(毎年12月にNHK総合にて放送)
- 出演者: 高橋一生、飯豊まりえ、泉澤祐希、森山未來、瀧内公美、中村倫也 ほか
- 脚本: 小林靖子(原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』『ジョジョの奇妙な冒険』)
- 音楽: 菊地成孔
- あらすじ:
『ジョジョの奇妙な冒険』の第4部に登場する漫画家・岸辺露伴が、漫画のリアリティを追求する旅先や日常の中で遭遇する、奇妙な不可思議な事件や怪異の数々に立ち向かっていくミステリー。
こちらの作品の凄いところは、原作の「ジョジョ」において必須要素であるはずの異能力「スタンド」という概念の描写を、あえて「ヘブンズ・ドアー(本にする能力)」という怪異現象のルールだけに絞り、徹底的に削ぎ落とした点です。
キャラクターデザインが強烈な原作を実写化すると、どうしてもコスプレ感や2.5次元っぽい見え方になりがちなのですが、このドラマは現実の「生身の人間」への再解釈が素晴らしい。この手の世界観で実写化を成功させ、なおかつ一般層まで巻き込んだのは本当に偉業レベルだと思います。高橋一生さんの露伴が放つ独特の色気と説得力には脱帽するしかありません。
さらに、美術、衣装、そして菊地成孔さんの手掛ける妖艶な音楽まで、すべてのこだわりが芸術鑑賞に等しいクオリティです。物語の展開が秀逸というよりは、作品全体の世界観が素晴らしい均衡で保たれていて、その独特な怪しい雰囲気に心を囚われ、何度もあの奇妙な世界に浸りたくて見返してしまいます。私は原作も全巻読んでいますし、荒木飛呂彦先生の大ファンなのですが、これまでの「お仕事お役立ち系ドラマ」とはまた全く違う、深い愛着を持っている特別な実写化作品です。
⑥ 『大豆田とわ子と三人の元夫』

- 放送時期: 2021年4月〜6月(カンテレ・フジテレビ系)
- 出演者: 松たか子、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平
- 脚本: 坂元裕二(完全オリジナル脚本)
- 音楽: 坂東祐大 / 主題歌:STUTS & 松たか子 with 3exes
- あらすじ:
3回結婚して3回離婚したバツ3の独身女性・大豆田とわ子が、建設会社の社長に就任。なぜかいまだに彼女の周りをうろうろしている、毛色の違う3人の元夫たちに振り回されながらも、愛おしい日々を紡いでいく大人のロマンティック・コメディ。
さあ、いよいよ最後にご紹介するのは、ドラマ好きのみなさんのための、我らが坂本裕二さんの傑作です(誰目線)。数々の名作を生み出してきた坂本さんですが、私はドラマ部門ではこれが一番大好きで、何回も見返しては、そのたびに生きる元気、もらってます。
この作品も、日々を不器用ながらも頑張って生きていく人間の姿を描いているのですが、前編で紹介した野木亜紀子さんの描き方とはアプローチが対照的なのが面白いところ。 野木さんがドキュメンタリーのようなリアルな生活感を描くのに対して、坂本裕二さんの場合は、日常の中に「ドラマチックなファンタジー」を絶妙なエッセンスとして溶け込ませている感覚があります。クスッと笑える会話のラリーや、絶妙なトークテーマの選び方は軽やかでリアルなのに、どこか淡々としていたり、言葉選びや口調が独特で詩的だったりする。そのアンバランスさが、観ていて「これぞ極上のテレビドラマを観ている!」という贅沢な気持ちにさせてくれるのです。
あとはやっぱり、坂本さんは「大切な人と過ごす時間の尊さ」を描かせたら右に出る人はいませんね。人と関わって暮らしていくこと、別れてもなお紡がれる関係の温かさ。それらを押し付けがましくなく、そっと育てるように描いてくれるので、観終わったあとはいつも、自分の周りにいる人を大切にしたくなります。
ちなみに、音楽担当が今大注目の音楽家・坂東祐大さんなのも超重要ポイント。毎回エピソードごとに変わるゲストラッパー(KID FRESINOやBIM、Daichi Yamamotoなど)と松たか子さんが歌い、STUTSさんが坂東さんの劇伴をサンプリングして仕上げた主題歌「Presence」は、日本のドラマ史に残る格好良さです。作品全体のトータルデザインのまとまりが、ちょっとレベル違いな作品です。
おわりに
前後編にわたってお届けした、私の「中毒ドラマリスト」。私の周りには普段あまりドラマを熱く語れる人がいないため、ここぞとばかりにドラマ愛が爆発した記事になってしまいました…笑。
もしこれがテキスト記事ではなく、対面で誰かとカフェで話すような機会だったら、あまりの熱量とマシンガントークで、エミネムになってしまうことは不可避だったと思います。それくらい、日本のドラマには人生を変えるほどのパワーがある作品がゴロゴロ転がっています。
斜に構えて何もしないより、物語の世界にどっぷり浸かって、笑って、泣いて、心を動かされる方が、絶対に毎日は楽しいはず。 「最近ドラマ観てないな」というそこのあなた、今夜のサブスクの検索窓に、ぜひこの6つのうちのどれかのタイトルを打ち込んでみてください。皆さんの退屈な夜が、一瞬で最高の劇場に変わることをお約束します!
